昇格組は1年で降格するチームが多いのか—5大リーグ10年分のデータで見る「往復切符」の正体

「昇格組はほとんどが1年で落ちる」は本当なのか。欧州5大リーグの過去10シーズン、昇格136クラブの1年目の成績を数え、プレミアだけが厳しい理由を放映権格差とパラシュート・ペイメントから読み解きます。残留の目安になる数字も紹介します。

昇格と降格の往復切符

毎年5月の終わり、ロンドンのウェンブリー・スタジアムでは、イングランド2部(チャンピオンシップ)のプレーオフ決勝が行われます。勝てばプレミアリーグ、負ければもう1年2部。「世界で最も価値が高い1試合」とも呼ばれるこの試合で、勝った側のサポーターは涙を流し、選手は芝の上に倒れ込みます。

しかし、その歓喜から1年後、同じクラブが再び2部に戻っている光景を、私たちは何度も見てきました。2023-24シーズンと2024-25シーズンには、プレミアに昇格した3クラブがそろって1年で降格しています。2シーズン続けて、合わせて6クラブすべてです。

「昇格組は1年で落ちる」。サッカーファンの間ではもはや定説のように語られます。では、これは本当なのでしょうか。プレミアだけの話なのか、欧州全体の傾向なのか。本稿では、欧州5大リーグの過去10シーズン(2016-17〜2025-26)に昇格した136クラブの1年目を数え、この問いにデータで答えます。

キーワードは「往復切符」。

昇格の切符が、行きと帰りがセットになった切符になってしまうのはなぜなのかを見ていきます。

136クラブ
5大リーグの昇格組
(過去10季)
60.3%
5大リーグ全体の
1年目の残留率
46.7%
プレミアリーグの
1年目の残留率
約9倍
プレミアと2部の
1クラブ平均収入の差

🏟️ 「世界で最も価値が高い1試合」

英語圏では「the richest game in football」と呼ばれます。お金がかかる試合という意味ではなく、勝者が手にするお金がいちばん大きい試合という意味です。プレミアに上がれば、放映権料やスポンサー収入が一気に跳ね上がるためです。2026年の決勝は5月23日に行われ、ハル・シティがミドルズブラを1-0で下して昇格を決めました。観客は8万4,506人でした。

📊 5大リーグで比べる「1年目の残留率」

まずは全体像です。各リーグの昇格クラブが、1年目のシーズン終了後にトップリーグに残れたかどうかを数えました。プレーオフ経由で昇格したクラブも含みます。

昇格1年目の残留率(2016-17〜2025-26)
昇格クラブのうち、1年目のシーズン後もトップリーグに残ったクラブの割合
リーグ・アン
72.0%
ブンデスリーガ
71.4%
ラ・リーガ
66.7%
5大リーグ全体
60.3%
セリエA
50.0%
プレミアリーグ
46.7%
出典:英語版Wikipedia 各シーズンの最終順位表をもとに筆者集計

リーグ昇格クラブ数
(10季)
1年目で残留残留率
(10季)
残留率
(直近5季)
降格枠
プレミアリーグ 301446.7%40.0%6/15 20クラブ中3自動降格
セリエA 301550.0%60.0%9/15 20クラブ中3
ラ・リーガ 302066.7%66.7%10/15 20クラブ中3自動降格
ブンデスリーガ 211571.4%60.0%6/10 18クラブ中2+入れ替え戦
リーグ・アン 251872.0%61.5%8/13 2023-24から18クラブ2+入れ替え戦
5大リーグ合計 1368260.3%57.4%39/68 —

出典:英語版Wikipedia 各リーグ・各シーズンの最終順位表(2016-17〜2025-26)をもとに筆者集計。「直近5季」は2021-22〜2025-26。リーグ・アン2019-20はコロナ禍により28試合で打ち切り。

5大リーグ全体で見ると、昇格組の約6割は1年目を乗り切っています。「昇格組は1年で落ちる」は、少なくとも欧州全体の話としては言いすぎです。

ところが、プレミアリーグだけを取り出すと景色が変わります。10季で46.7%、直近5季に限れば40.0%。5大リーグで唯一、半分を下回っています。別の分析でも、2006-07〜2025-26の20シーズンでプレミアの昇格組の残留率は53.3%(60クラブ中32)で、「コイントスをわずかに上回る程度」と表現されています。

降格枠の数だけでは説明できない

「ブンデスリーガは18クラブで自動降格が2つだけだから残りやすいのでは」という反論はもっともです。実際、ブンデスリーガとリーグ・アン(2023-24以降)は降格枠が小さく、そのぶん昇格組に有利な構造です。

しかし、プレミアと同じ「20クラブ・3クラブ自動降格」のラ・リーガでも、残留率は66.7%あります。降格枠の数が同じでも、昇格組の運命はこれだけ違うのです。一方でセリエAも50.0%と低く、プレミアに近い数字です。降格枠以外の何かが効いている、と考えるのが自然でしょう。

プレミアの「全滅」は史上3回だけ

昇格3クラブがそろって1年で降格したのは、プレミアリーグの歴史で1997-98、2023-24、2024-25の3回だけです。そのうち2回が直近の2シーズンに集中しました。

ただし2025-26シーズンは、サンダーランドが7位(勝点54)、リーズが14位(勝点47)で残留し、連続全滅は止まりました。降格したのはバーンリー(19位、勝点22)だけです。「往復切符」は確定ではなく、あくまで「そうなりやすい」傾向だという点は押さえておきたいところです。

💷 なぜプレミアは厳しいのか—放映権格差とパラシュート

同じ20クラブ・3降格でも、プレミアの昇格組はなぜ残りにくいのか。
有力な説明として考えられるのが、1部と2部の「お金の段差」です。

1部と2部の間にある「約9倍の崖」

デロイトの年次報告によると、2024-25シーズンのプレミアリーグの収入は合計68億ポンドで過去最高でした。一方、チャンピオンシップ(24クラブ)の収入は合計9億4,200万ポンドです。1クラブあたりに直すと、プレミアは平均約3.4億ポンド、チャンピオンシップは平均約3,900万ポンド。およそ9倍(正確には約8.7倍)の差があります(1クラブあたりの数字は筆者の計算)。

1クラブあたりの平均収入(2024-25)
リーグ全体の収入をクラブ数で割った単純平均/単位:ポンド
プレミアリーグ(20クラブ)
約3.4億
チャンピオンシップ(24クラブ)
約3,900万
差は約9倍(正確には約8.7倍)
出典:デロイト「Annual Review of Football Finance」(合計値)。1クラブ平均は筆者計算
💸 収入の96%が人件費に消える2部

チャンピオンシップの人件費は9億300万ポンドで、収入の約96%に達しています。FPの目線で言えば、これは「収入のほぼ全額を固定費に回している家計」です。税引前の赤字は合計3億5,500万ポンドに膨らみ、黒字だったのは24クラブ中3クラブだけでした。2部のクラブの多くは、昇格というリターンを狙って赤字覚悟の投資をしている状態だと言えます。

パラシュートは「降格保険」—そして往復切符の仕組みへ

プレミアから降格したクラブには、「パラシュート・ペイメント」と呼ばれる移行期の分配金が支払われます。1年目は均等配分額の55%、2年目は45%、3年目は20%です。ただし3年目がもらえるのは、プレミアに2シーズン以上いたクラブだけです。

降格後受け取る割合金額(2024-25)条件
1年目 均等配分額の55% 約4,890万ポンド 降格したすべてのクラブ
2年目 均等配分額の45% 約4,010万ポンド 降格したすべてのクラブ
3年目 均等配分額の20% 約1,780万ポンド プレミアに2シーズン以上在籍したクラブのみ

出典:英語版Wikipedia「Premier League parachute and solidarity payments」、EFLが英国議会に提出した資料(2024-25の金額)

2023-24シーズンの降格組が翌シーズンに受け取った1年目の額は、約4,900万ポンドです。これを2部の平均収入と並べてみると、その大きさがよくわかります。

パラシュートだけで、2部の平均収入を上回る
2024-25/単位:ポンド
パラシュート1年目
4,890万
パラシュート2年目
4,010万
2部の平均収入
3,900万
パラシュート3年目
1,780万
パラシュートは降格組が受け取る分だけ。これにチケットやスポンサーなど本来の収入が加わります。
出典:EFL提出資料(英国議会)、デロイト。2部の平均収入は筆者計算

パラシュートの1年目だけで、2部のクラブの平均収入を上回ります。これは保険で言えば「収入保障保険」のようなものです。降格のショックを和らげる一方で、2部の中では降格組だけが「保険金を受け取りながら戦う」状態になります。実際、パラシュートを受け取っているクラブは、受け取っていないクラブより再昇格しやすいという分析があります。BBCによると、直近5シーズンはいずれも、チャンピオンシップから昇格した3クラブのうち2クラブがパラシュート受給中のクラブでした。

その典型が、2023-24と2024-25をプレミアで戦った昇格組6クラブです。このうちバーンリー、シェフィールド・ユナイテッド、レスター、サウサンプトンの4クラブは、プレミアから落ちてパラシュートを受け取っていたクラブでした。そしてこの4クラブを含む6クラブ全員が、また1年で落ちています。

2021-22
プレミアで18位、降格
ここからパラシュートの受け取りが始まる。
2022-23
チャンピオンシップで優勝、昇格
降格からわずか1年で、プレミアに戻る。
2023-24
プレミアで19位、降格
昇格組3クラブがそろって降格した「全滅」シーズン。
2024-25
再びチャンピオンシップから昇格
またも1年でプレミアへ。
2025-26
プレミアで19位(勝点22)、降格
同期の昇格組サンダーランドとリーズが残る中、ただ1クラブ降格。

ここに「往復切符」の仕組みが見えてきます。パラシュートの力で2部では勝てるが、プレミアで残れるほどの戦力ではない。チャンピオンシップでは「強すぎ」、プレミアでは「弱すぎ」という中間地帯に、いくつかのクラブが閉じ込められているのかもしれません。

🔍 ただし、これは「有力な説明」の一つ

ここで数字で示せたのは、プレミアとチャンピオンシップの間の収入格差と、パラシュートが再昇格を助けていることまでです。他のリーグの1部と2部の格差と比べたデータは、本稿では扱っていません。プレミアに近い低さのセリエA(50.0%)の理由も、この説明だけでは説明しきれません。放映権格差とパラシュートは、プレミアの昇格組が苦しむ「有力な説明の一つ」として読んでください。

📉 失敗例—「1年目の崖」を転げ落ちたクラブ

記録的な低勝点

プレミアリーグ史上の最低勝点ランキングは、ほとんどが昇格1年目のクラブで占められています。

順位クラブシーズン勝点昇格1年目か
1ダービー・カウンティ2007-0811はい
2サウサンプトン2024-2512はい
3サンダーランド2005-0615はい
4=シェフィールド・ユナイテッド2023-2416はい
4=ハダースフィールド2018-1916いいえ昇格2季目

出典:Opta Analyst「Lowest Points Totals in Premier League History」

上位3クラブと、同率4位のシェフィールド・ユナイテッドは、いずれも昇格1年目です。そのうち2つ(サウサンプトンとシェフィールド・ユナイテッド)が、直近3シーズンの記録です。

共通点は「守備の崩壊」

Opta Analystの分析によると、プレミアで69失点以上した昇格組は33クラブ中31クラブが降格しています(93.9%)。逆に68失点以下なら、降格は68クラブ中16クラブ(24.2%)にとどまります。

点を取るより先に、まず失点を1試合1.8点程度に抑えられるかどうか。昇格組の命運は、攻撃より守備で決まりやすいことがわかります。

🥇 成功例—往復切符を「片道」に変えたクラブ

もちろん、1年目から堂々と戦ったクラブもあります。過去10シーズンの各リーグで、昇格1年目の最高成績を並べてみます。

リーグクラブシーズン順位勝点
ブンデスリーガRBライプツィヒ2016-172位67
プレミアリーグウルヴァーハンプトン2018-197位57
プレミアリーグサンダーランド2025-267位54
ラ・リーガグラナダ2019-207位56
リーグ・アンRCランスLens2020-217位57
セリエAエラス・ヴェローナ2019-209位49

出典:英語版Wikipedia 各シーズンの最終順位表

サンダーランド(2025-26)の「例外」

2025-26のサンダーランドは勝点54で7位。昇格組としては、2020-21のリーズ(勝点59)以来の高い勝点でした。直前の2シーズンで6クラブが全滅していたことを考えると、流れを断ち切った存在と言えます。ホームでの勝点33はリーグ8番目の多さで、「ホームで勝点を積む」という残留の基本をしっかり実行していました。

ウニオン・ベルリン—昇格組からCLへ

ブンデスリーガのウニオン・ベルリンは、2019-20に初めて1部へ昇格し、1年目は11位(勝点41)で残留しました。そこから一歩ずつ順位を上げ、2022-23には4位(勝点62)でチャンピオンズリーグ出場権を手にしています。昇格1年目の残留は、ゴールではなくスタートだったわけです。

🏆 伝説——昇格即優勝のカイザースラウテルン

究極の成功例は、1997-98シーズンのカイザースラウテルンです。2部から戻ってきたその年に、勝点68でブンデスリーガを制しました。優勝を決めたのは1998年5月1日、1試合を残してのことでした。昇格したばかりのクラブがブンデスリーガで優勝したのは、今のところこの1回だけです。

🎯 残留の目安—数字で見る「生き残りライン」

では、昇格組が残れるかどうかは、シーズンのどこで見分けられるのでしょうか。Opta Analystがプレミアの過去のシーズンを分析した数字が参考になります。

指標目安過去の結果
開幕5試合の勝点8以上16クラブ中、降格0
開幕5試合の勝点6ちょうど14クラブ中10クラブが降格(71.4%)
開幕5試合の勝点3以下25クラブ中22クラブが降格(88%)
失点(38試合)68以下69以上だと33クラブ中31クラブが降格
ホームの勝点30以上38試合制で降格したクラブはなし
18位の平均勝点33.8残留ラインの目安直近22シーズンの平均

出典:Opta Analyst「Premier League Survival Guide: How Can the Promoted Teams Stay Up in 2026-27?」(2026年8月)。指標によって対象期間が異なります(開幕5試合は過去34シーズン、18位の平均勝点は直近22シーズン)。

開幕5試合でほぼ明暗が分かれる、というのは驚きです。ただし、開幕5試合で勝点3しか取れなくても残留したクラブ(2004-05のウェスト・ブロム、2012-13のサウサンプトン、2013-14のクリスタル・パレス)もあります。データは「確率」であって「運命」ではありません。

2026-27のPL昇格組はどうか

今季(2026-27)のプレミアリーグ昇格組は、コヴェントリー、イプスウィッチ、ハルの3クラブです。

2026/10/19時での順位です。

クラブ順位試合勝点ひとこと
ハル・シティ9位79中位につける
イプスウィッチ・タウン10位79中位につける
コヴェントリー・シティ17位76降格圏の18位フラム(勝点5)と1点差

ハルとイプスウィッチは中位につけ、2クラブが残留圏で秋を迎えている点は、全滅に終わった2シーズンとは違う兆しと言えそうです。一方、コヴェントリーは10月19日にトッテナムに1-3で敗れ、降格圏とわずか1点差。3クラブの明暗は、まだ分かれていません。

✅ 結論—昇格組は本当に大半が1年で落ちるのか

欧州全体では「言いすぎ」。ただしプレミアでは「往復切符」になりやすい、が答えとなります。

欧州5大リーグ全体で見れば、昇格組の約6割は1年目を乗り切っており、「1年で落ちる」は言いすぎです。

しかしプレミアリーグに限ると、残留率は過去10季で46.7%、直近5季で40.0%と5大リーグで最も低く、「往復切符」になりやすいのは事実です。その背景として有力なのが、1部と2部の約9倍の収入格差と、降格組の再昇格を助けるパラシュート・ペイメントです。2部では強いがプレミアでは足りない、という中間地帯のクラブが行き来を繰り返すことで、「昇格組は落ちる」という印象がさらに強まっていると考えられます。

これから昇格組の試合を見るときに、問い直したい視点が3つあります。

  • 1
    開幕5試合の勝点

    8以上なら安全圏、3以下なら危険信号。秋の時点で、すでにかなりのことがわかります。

  • 2
    失点のペース

    1試合1.8失点を超えていないか。得点より先に失点を見ると、残留の可能性が見えてきます。

  • 3
    「出戻り組」か「初挑戦組」か

    パラシュートを受け取っていた出戻り組なのか、そうでないのか。直近2季では、出戻り組も初挑戦組もそろって落ちました。昇格の経緯は、そのクラブの財布の中身を映しています。

来年5月、ウェンブリーでまた誰かが涙を流すはずです。そのクラブが手にするのは片道切符なのか、往復切符なのか。答えが出るのは、その翌年の5月です。

森智之
この記事を書いた人
森 智之
データ好きのサッカーファン
欧州サッカーの歴代データを眺めるのが趣味のサッカーファン。本業は食品輸出とファイナンシャルプランナー。毎年ヨーロッパへ現地観戦に行くほどのサッカー好き。数字の裏にある物語を探しながら、FootballWayを運営しています。

出典(記事末尾に掲載する場合)